今週月曜日(2018年5月7日)発売の週刊ヤングマガジン第23号に花沢健吾先生の新連載の告知が載っていました。下の新連載四本予告折り込みページの一番左が花沢健吾先生新作の告知です。告知、と言いますか、CONFIDENTIALとスタンプされてますので、まだ誰にも言ってはいけない機密事項のようです。ですのでこの記事も内緒にしてくださいね。

タイトルは「アンダーニンジャ」。(仮)がついているのでまだ仮題です。しかし連載開始は7月23日発売の34号から、つまり二ヶ月半後です。連載間近とも言えるこの時期につけられた題なのですから、仮題とは言え、いえ、仮題であるだけになおのこと、内容・テーマと密接に結びついたタイトルと思われます。

さて、「アンダーニンジャ」という単語、ちょっと聞き慣れない言葉です。英語に “under ninja” というフレーズが存在するか検索してみましたが、少なくとも一般的用語としては使われていないようです。おそらく、忍者階級のうちの「下忍」をそのまま英語に直訳した作者の造語なのではないでしょうか。weblioでは「下忍」の訳として low-ranking ninja を当てていますが、これは「おにぎり」を “rice ball”と訳すのと同じ単なる説明訳ですので、昨今の国際的な ninja ブームにも関わらず、下忍という概念までは外国には浸透していないようです。




画像の主人公(?)は現代風のスタイルですので、そうだとすると新連載は、現代を舞台とした下忍、すなわち忍者の下層階級、もしくは忍者の実働部隊の物語でしょうか。

ちなみに、under ninja を検索しているうちに、次の三つの記事を発見しました。すべて今回の「アンダーニンジャ(仮)」新連載を伝える記事です。

Under Ninja, le nouveau manga de Kengo Hanazawa (フランス語)
Il titolo e la data di inizio del nuovo manga dell’autore di “I am a hero” (イタリア語)
Under Ninja, la nueva obra de Kengo Hanazawa (スペイン語)

いずれも昨日発売のヤンマガの記事を読んでの第一報記事ですので、昨日の今日までに書かれたものです。なんとまぁ、世界中、少なくともヨーロッパで花沢健吾先生の新連載が注目を浴びていることでしょう!

私も思い起こせばこのブログで、花沢先生の新連載についての記事をポストしたのがはや半年前です。
花沢健吾先生新連載は『ビッグコミック・スペリオール』に掲載

その後、作者自身により、スペリオール誌のほかに、ヤングマガジン誌でも新連載が掲載される告知がありました。

また、求人サイトでは両新連載のためのアシスタント募集もありました。
花沢健吾先生新連載のレギュラーアシスタント募集
「…スペリオール及び、講談社週刊ヤングマガジンにて連載予定の花沢健吾先生がレギュラーアシスタントを募集しております」(現在も募集中のようです)

ということでヤンマガでの新連載も一応承知はしていたのですが、多忙にまぎれてこのブログで記事にする紹介するイトマもないうちに、連載開始日が告知されてしまいました。

スペリオール誌の新連載についてはまだ続報はありませんが、別段中止の報せもないことですし、それほど連載開始をずらすとも思えないので、旬日の前後に、つまり今週金曜日発売号か来来週発売のスペリオールあたりで告知されるのではないでしょうか(スペリオールは第二・第四金曜日発売)。

さて、過去に当ブログホームページで何度か触れましたが花沢作品には、作品ごとに与えられたテーマと、すべての作品に通底するテーマが存在しています。

作品ごとのテーマとは、処女長編『ルサンチマン』ではVRゲーム、第二長編『ボーイズ・オン・ザ・ラン』では(曲折はありましたが)ボクシング、前作『アイアムアヒーロー』ではゾンビ、でした。

作品に通底するテーマとは、心の問題です。心についてのテーマは二つあり、一つは第一作のタイトルそのままにもなった”ルサンチマン“です。世間から正当に認められていないという作者の鬱憤・不満が、三作いずれの主人公にも強く投影されてきました。もっとも作者は近年のエッセイで、アイアムアヒーローが世間で認知されたあたりからそうした”ルサンチマン”が希薄になってきたことを語っています。今後の作品の主人公がルサンチマンを抱え続けることはないのでしょう。

一方、もう一つの心に関するテーマは、”ルサンチマン”にも関係はしていますが、もっと直接的な、コミュニケーションへの絶望とコミュニケーションへの渇望です。これについてここで詳しく解説する余裕はないので他記事を参照していただくとして、コミュニケーションへの絶望と渇望は、第一作、第二作、第三作、いずれにも中心的テーマとして存在していました。そして軽重はあるにしろ、今後の作品にも存在するものと私は思い、期待しています。

ただ、今回は二作品並行連載となります。スペリオールの新連載(題未定)では心についてのテーマに重点がおかれ、ヤンマガの新連載(仮題「アンダーニンジャ」)ではエンターテインメントに重点が置かれるのではないかというのが私の予想です。そういえばだいぶ以前、アイアムアヒーローのまだ前半の頃、作者はロボットものをテーマにしたエンターテインメントを描きたい、とも語っていました(それがロボットものではなく、忍者ものになったのかもしれません)。

前作アイアムアヒーローの公式twitterアカウント( @Iam_a_HERO )からも告知がありました。

後者のツイートはちょっと驚きです。スペリオールとヤンマガの新連載担当編集者が、このアイアムアヒーロー公式アカウントを共有して情報提供してゆく、ということのようです(その場合、おそらくアカウント名も変更されるのでしょう)。なんでそんな面倒なことをするのかという疑問がわきます。

今回の花沢健吾先生のスペリオール、ヤンマガへの移籍に関しては、ネットでは色々憶測があるようです。私はさっぱり事情を承知する立場ではありませんが、もしかするとそうした憶測を打ち消す意味もあって、一つのアカウントに呉越、じゃなくて仲良く相乗りしましょう、ということになったのかもしれません。




前者のツイートで気になるのは(まんまと釣られてみますが)ハッシュタグ「#衣装に注目」の部分。この主人公(?)のベースとなる絵自体はずいぶん前から使われていたものです。

「#衣装に注目」が彼の衣装のことを言ってるのだとしたらそれは彼の着ているパーカーのことでしょう。色々検索すると、こんな風に顔をすっぽり覆うパーカーは忍者パーカーとも言うようです。そうすると、やはりタイトル(「アンダーニンジャ」)とあわせ、忍者をテーマとした作品ということになりそうです。フードの額部分についているマークが、もしかしたら甲賀とか伊賀あたりの家紋かもと画像検索してみましたが、これはちょっとピンとくるものはありませんでした。

時の権力者、あるいはそれに対峙する勢力が利用してきた忍者。この新連載は、明治維新で消え去ったかと思われた彼らの末裔が、現在も一定の役割を得て存在しているという世界の話なのでしょうか。私の貧相な想像力では、IT技術やハッキングを駆使する現代忍者、くらいしか思い浮かびませんが、「超弩級エンターテインメント」の惹句がついている花沢先生の新連載です。そんな陳腐な予想を遥かに越える仕掛けのあることを期待しています。