「アイアムアヒーロー」第153話【ネタバレ注意】

2週間の休載明けとなる今週号。なんだか妙にシイタケを引っ張りますね。以降、ネタバレとなりますので未読の方はここでスキップをお願いします。




散々コテージを「荒らした」お詫びとして、藪は書置きを残します。自分の名前・住所を明記し、ちゃんと責任を取ろうという立派な態度です。

その住所の一部が描かれており「埼玉県久喜市上早味」と読めます。上早味という町名は久喜市内には実在しませんが、上早見なら実在しています。上早味は、おそらく上早見をイ=ルモン変換()したものでしょう。

最初に藪が久喜出身であることが明かされたのは第100話(9巻)です。そのあとに久喜編が始まりました。単純に考えて、東京経由で久喜市に到達した藪・英雄・比呂美一行が、久喜市の来栖一行と出会う展開が予想されました。

しかし、久喜組はどうやら東京目指して南下を開始するようです。そもそも英雄一行も、東京方面とは言っていますが実際に久喜市を目指すとは一度も言っていません。

どうやら一行が出会うとしても、それは東京都内である可能性が高そうです。

それであればなぜ今回、念を押すように藪の出身地が久喜市であることを、さらに町名まで追加して描写したのでしょうか。これが何らかの伏線であり、久喜市という土地で英雄一行と久喜組を結びつけるためのものでないのだとすれば、久喜出身者同士という人のつながりで両者を結びつけるためのものであるのかもしれません。

素粒子の世界に、グルーオンという粒子があります。乱暴に言うと、クォークなどを結びつける働きをする粒子です。英雄一行と久喜組が出会ったとしても、当然お互いに強い警戒心を持っているでしょうし、特に久喜組の面々の性格を考えれば、下手をすると両者が衝突することもあり得ます。

藪は久喜組の誰か、おそらくは崇と、知人もしくは親戚か何かの関係であり、一方の覚醒者比呂美と、もう一方の覚醒者崇とを結びつけるグルーオンの役割を果たすのではないでしょうか。

さて、今回の最後のシーンで、じゃんけんに負けたとおぼしき英雄が、藪と比呂美をリヤカーに載せて引いています(ちゃんとジャンケンをして負けたのか、もしかしたら「最初はグー」のところでで比呂美がパーを出したのじゃないか、と少し気になります)。




引かれながら比呂美は「今、人生で一番楽しいかも…」「世界が、このままでもいいかもって…」とつぶやきました。

比呂美が今が一番楽しい、と考える理由は、彼女が樹海に入る前に置かれていた状況を考えれば納得が行きます。学校ではいじめの対象とされ、比呂美は自殺を思いつめるほど苦しんでいました(「絶望についての考察」参照)。家庭でも、母の入院のほか、父親との関係にも深刻な問題のあった可能性があります(「夢についての考察 – 父親」参照)。また、おそらく経済的問題もあったようです(「靴についての考察」(後日掲載予定)参照)。

現在の比呂美はこれらすべての問題から解放され、基本的に善人である英雄・藪と、疑似的な家族関係を結んでいます。そこに比呂美が幸福を感じても不思議ではありません。

藪はもちろん、比呂美のそうした境遇を知っているわけではないでしょう。しかし藪が「それはダメ」と言下に否定したのは、比呂美の「楽しい」が、明らかにマイナスとの比較で言っていることを察したからでしょう。

)現実の地名や人名を微妙に書き換えて架空の地名・人名を創り出すことを指す業界用語。アイアムアヒーローで例を挙げると、「ガースベーク城」→「グレスバーグ城」(ベルギー編第146話)、「入間市(いるまし)」→「入門市(いるもんし)」(都心編第24話)などがあります

※記事中で引用した画像は単行本・花沢健吾『アイアムアヒーロー』(小学館)、または週刊『スピリッツ』(同)より

(2013/08/26 20:13 投稿)