「アイアムアヒーロー」第151話【ネタバレ注意】

今週は巻頭カラー。2ページ見開きのカラーページというちょっと珍しいパターンでした。以下ネタバレ全開、というか連載は読んでいるという前提で書いていますので、未読の方が読んでもなんのことやらわからない内容だと思います。

料理にジャマだったせいでしょうか。今週号では後ろに髪をまとめ、ポニーテールになっていた比呂美ちゃん。



髪型の違いだけではなく、感染前、あるいは感染中に比べて顔つき・表情が変わったなという印象を受けます。これは数晩のあいだの「成長」を表す意図したものなのか、あるいは単に作画スタッフが替りでもしたのでしょうか。もともと表情を描いた絵柄の安定しない作風なのでちょっとよくわかりません。

変わったと言えば、感染前の腰の据わった言動に比べて、今の比呂美のそれはやはりどこかふわふわしている感じです。まだ現実感を取り戻していないというか、意識と現実が乖離しているという印象。今週の「お母さんが入院しているから…」というセリフからも、正常であれば自分の発したそのセリフから引き起こされるはずの、現在の母親の状況を案ずる動揺が伺えません。

母の入院以外に荒木のことも覚えており、感染前の記憶は残っているようですが、感染中の記憶はまだ失われたままです。編集が柱の煽りに書いたような「微妙な均衡を保つ3人」という関係が生まれるのは、まず比呂美の心が正常な働きを取り戻してからの話でしょう。

食事のシーン。女2対英雄1になっても英雄のポジションは、神社で比呂美がつぶやいた通り「役に立つんだか立たないんだか」から変わっていません。

タイトルが暗示する通り「アイアムアヒーロー」は、主人公がそうありたいと念じつつもヒーローには成らず、成長もしない物語だと私は思っています。

モール屋上で、藪とブライ、黒沢のグループは、被支配者側とまでは言えないまでも非主流派として行動していました。黒沢がブライとはタメ口で話すのに対し、藪にはさん付けで話していたことから、そのグループでは藪がリーダー格であったことは間違いありません。

三人が屋上で過ごしした期間がどれくらいであったかはわかりませんが、英雄がブライと共に行動した時間よりずっと長いことは確かです。

したがって今週号で藪の言った「残酷かもしれないけど、死んだ人たちより、今は生きている人間のことだけ考えよう」のセリフは、英雄に対してというより、むしろ自分自身に言い聞かせたセリフなのでしょう。

さて、現在の状況を整理すると、まずこのコテージにはそれほど食料はありません。藪のクルマはガス欠寸前です。両者はとりあえず近辺で調達する必要があります。できれば英雄の銃の弾丸も補充したいところですが、芦ノ湖近辺で銃砲店はどうでしょうか。

また藪が比呂美を連れて行きたいと思っている「専門機関」のたぐいがどこにありちゃんと機能しているのか、おそらく藪自身もわかっていないでしょう。当初の英雄の目的通り東京に向うにしても、まず東京やそこに至る街の状況を知りたいところです。




つまるところ一行に今一番不足しており、一行が今一番欲しいのは情報です。テレビ、ラジオはすでに放送されていませんので、二人はいかにネットに接続できるかを考えるのではないでしょうか?

炊飯器が使えるようなので、コテージに電気は届いてるようです。ネット(掲示板)は、まだ生きている可能性が高いと思います。前回推測しましたが、この152話時点の日付はおそらく2009年5月14日前後(→カレンダー)。そのつい二日前にはまだネット掲示板は生きていました(確認できる一番新しい書き込みは5月12日18時25分55秒の「久喜第三中学」からのもの-11巻124話125頁)。

なお、twitterは、2009年5月の時点では存在していましたが、日本でもまだそれほど一般的なサービスではありませんでした。

グラフは総務省|平成24年版 情報通信白書図表2-3-2-10 ソーシャルメディア利用者数の推移(Facebook、Twitterの例)グラフに2009年5月のマークだけ追記したものです。

※記事中で引用した画像は単行本・花沢健吾『アイアムアヒーロー』(小学館)、または週刊『スピリッツ』(同)より

(2013/07/29 11:47 投稿)