「アイアムアヒーロー」第144話【ネタバレ注意】

一カ月半ぶりの連載開始です。今回もネタバレばりばりになりますので、未読の方はここでスキップお願いします。




さて、再開後はてっきり英雄、藪、比呂美たちに話が戻るものかと思っていましたが、舞台はいきなり遙か遠いベルギー国の首都、ブリュッセルへと飛びました。以前自分で、アイアムアヒーロー | 弱い力・強い力の最後に「久喜編の次に、どこか遠い地(離れ島とか、遠い外国とか)を舞台にしたエピソードが挟まれるのかもしれません」と書いていたのですが、前回143話の最後のフェイントにすっかり騙され(?)てしまいました。

今回の主役は、ゲルマン系の謎の男性です。この男性の置かれた状況も街の状況も、まったく謎だらけです。

ただ、この男性の登場した場所・移動経路は地図( google map )の上で完全に辿れます。このあたりはブリュッセルの有名な観光コースにもなっていますので、まずはそれを追ってみましょう()。下の地図はブリュッセル中心にあるブリュッセル公園からロワイヤル広場にかけての地図です((c)google)。こちらが同地図の Google Map です。男性は王宮前の A 地点でカラスに突かれて目覚め、以下アルファベット順に H 地点の店(“OLD ENGLAND”)まで移動しました。OLD ENGLAND はアールヌーボー建築として有名な建物で、現在は楽器博物館となっているそうです。なお、地図の青線は Google map 機能を使ったら勝手にこのコースになってしまったもので(変更方法がよくわからない)、特に G → H などはこの線の通りではないはずです。

今年、小学館漫画賞を受賞した作者は、そのご褒美(?)として、作者夫妻と担当編集者でベルギーに取材旅行に出かけ、現地の漫画ファンとの交流もあったようです。

A~H をクリックすると Google ストリートビューの 2013/05/27 のスナップが表示されます。なるべく114話と同じ構図になるようにしていますので、ぜひ雑誌と見比べてみてください。また、ストリートビュー画面をクリックするとそのGoogle ストリートビューページが表示されます(現在は一致していますが、将来は Google ストリートビューの方は更新されるでしょう)。


(c) Google Map

ブリュッセル公園/王宮(ロイヤルパレス)   (c) Google Streatview

構図:週刊スピリッツ2013年 No.26 アイアムアヒーロー144回(扉から)4ページ目上
王宮(ロイヤルパレス)西側の門    (c) Google Streatview


構図:週刊スピリッツ2013年 No.26 アイアムアヒーロー144回(扉から)8~9見開きページ
ロワイヤル広場(ロワイヤル通りから)   (c) Google Streatview

構図:週刊スピリッツ2013年 No.26 アイアムアヒーロー144回(扉から)10ページ目下
ゴドフロワ・ド・ブイヨンの騎馬像(ロワイヤル広場)   (c) Google Streatview

構図:週刊スピリッツ2013年 No.26 アイアムアヒーロー144回(扉から)11ページ目上
ロワイヤル広場(モンターニュ・ド・ラ・クル通りから)正面は聖ヤコブ教会    (c) Google Streatview

構図:週刊スピリッツ2013年 No.26 アイアムアヒーロー144回(扉から)11ページ目中
モンターニュ・ド・ラ・クル通り(ミュージック店など)    (c) Google Streatview

構図:週刊スピリッツ2013年 No.26 アイアムアヒーロー144回(扉から)11ページ目下
芸術の丘(モン・デ・ザール)    (c) Google Streatview

構図:週刊スピリッツ2013年 No.26 アイアムアヒーロー144回(扉から)12ページ目上
OLD ENGLAND (男が屋上に登った店)   (c) Google Streatview

構図:週刊スピリッツ2013年 No.26 アイアムアヒーロー144回(扉から)13ページ目


いつ?

今回144話は、時系列的には、久喜編の終わり(5月13日)と並行しているか、それより少し後のタイミングのように思われます。(一人とはいえ) ZQN 感染者が登場しており、一方、首都でありながら人の姿がまったく消えている、というのは、数日程度で起こる変化とも思えないからです。

また、間接的な傍証になりますが、巻末柱の「事態は我々が思っているより遙かに進行している」のアオリからも、ZQN 禍発生から、少なくとも久喜編までに起こったような事態の先に進んでいることが伺えるからです。もっとも連載の巻末柱は、意図的なのか天然なのか、ミスリードを誘うアオリになっていることがたまにあるのですが、今回は物語の内容的にも、実際になにか「事態が進行している」雰囲気です。

進行している事態とは?

さて、その進行している事態とは何でしょうか?

可能性の一つ目は、ZQN感染のパターンが、久喜編で見られたような半感染・覚醒・特殊な能力の発現、等の延長上にさらに新しい発展を見せる事態でしょう。

もう一つの可能性は、ZQN禍の広がりに対して旧人類側の態勢が整い、何らかの反撃・対抗措置が取られるようになった、という事態です。

直観的には、両方の事態が同時並行しているような気もするのですが、いずれにしろ今回の話では情報が少なすぎて(末尾の気になる描写も含め)、何が「進行している事態」なのかはちょっと見当がつきません。

一方、男性の置かれた状況や街の状況については、冒頭に記したように謎だらけではあるのですが、謎はそれぞれヒントでもあり、「進行している事態」を解く鍵になるかもしれませんので、少し整理してみたいと思います。

目覚める前は?

漫画内の描写から男性は、ZQN禍についてまったく知識を持っていません。それどころか、街の異常な様子についても、読者以上の知識は持っていません。これが謎の第一です。

上に述べたように、時系列的には ZQN禍が発生してかなりの時間が経過していると思われます。しかし男性はまったくその知識を持っていないわけです。不思議な話ですが、とりあえず私の思いつくその理由は以下の4通りくらいです。

  1. ZQN禍発生から目覚める直前まで意識の無い状態だった。
  2. なんらかの理由で目覚める以前の記憶を喪失した。
  3. 外部的にコントロールされていて記憶が抑圧されている。
  4. そもそも目覚める以前は男性は存在していなかった。

4の可能性はとりあえず排除しておきます(現時点では話が飛び過ぎてしまうので)。

1について。ゾンビ禍の発生する直前に手術室で麻酔を受け、おかげで感染を免れたものの、再び目覚めたときには周囲に感染が広がっていた、というゾンビ映画がありました。

しかしこの男性を見る限り、およそ10日間も寝ていた・意識を失っていたようには見えません。まず、ベッドの上ならともかく、公園の石畳の路上の上でそう長くは安閑に横たわっていられはしないでしょう(カラスにつつかれます)。それ以上の理由として、男性には、長期間寝たきりであったあとのような衰弱が伺われません。若干頬がこけ、ヒゲも伸びているように見え、「体中が痛い」とは言っていますが、起きてすぐに普通に活動を開始しており、比較的短期間、もしくは通常の睡眠時間程度、寝ていたか意識を失っていたものと思われます。

したがってZQN禍発生からこの時点までの長期間、男性が意識の無い状態だった、あるいは眠っていたがために、ZQN禍のことを知らなかった、という可能性は低いと思われます。

もちろん、目覚める直前にこの場所に連れてこられて放置された、という可能性はありますが、その場合も、10日間も意識を失った状態であったとは(上の理由で)思えません。なお、男性が街に土地勘があることから、連れてこられたとしてもそう遠くからではないでしょう。ちなみに男性の話しているのは(Google 翻訳にかけてみたところ)フランス語で、フランス語はベルギーの公用語のひとつです。

結果として、消去法的に 2 もしくは 3 の可能性が残ります。残ったところで、これ以上の推測を解くようなキーは今回の話の中には見つかりませんので、あとは今後の話の展開を待つしかありません。



ZQNはどこへ?

男性が出会ったのは、近衛兵 ZQN 一人だけです。人口の多い首都で、ZQN が一人だけ単独で存在しているとは思えません。久喜編で出されたヒントから推測すれば、ZQN は集団で南かどこかへ移動した、もしくはどこかに ZQN の巣があって、そこに集結している、のいずれかのケースが考えられます。

今回最後に首都中央部で連続爆発が起こったことは、後者の可能性を暗示しているように思われます。

街の(表面的な)平穏さ

これも謎です。日本編の各地で見られた、ZQN禍の発生した街の荒れた雰囲気、自動車や電車の事故の跡、火事の跡、あるいは人が襲われた跡(死体や血糊など)がまったく無く、表面的には、人の姿が見られない以外は平穏です(最後の爆発以外)。

一つ上に書いた「ZQNが多数いるはず」が誤りで、実はごく少数しか発生しておらず、人々はどこかに潜んでいるのでしょうか?それとも日本のケースとは感染の広がり方が異なっているのでしょうか?

とあれこれ書きましたが、個人的には、あまり仕掛けや謎解きにばかり力を配分しないで欲しいなあ、という希望はあいかわらず持ち続けています。

※記事中で引用した画像は単行本・花沢健吾『アイアムアヒーロー』(小学館)、または週刊『スピリッツ』(同)より

(2013/05/27 07:56 投稿)