夢についての考察


比呂美
伊浦
サンゴ
目白 
ブライ
黒沢
藪と母親
田村
英雄
父親

目白

7巻76話140ページ比呂美の目に目白の姿は画像のように映っています。

後ろ側が目白、手前が英雄です。

これもまた現実の目白とは似ても似つかない姿です。巨大な顔に縦についたチャックの形の口。異様に太い腕。そして異様に細い脚。

しかし、他の夢の中の登場人物同様、その姿はやはり目白の身体的・心理的特徴を反映したものとなっています。

ナンバー3

まず現実の目白の姿です。雑誌掲載時には左のコマのように無地のTシャツでしたが、単行本収録時には「目白プロレス」のTシャツに修正されました。


週刊スピリッツ2011年11月号11頁   6巻67話173ページ

わざわざプロレス団体名を描き加えたことからも、またその体格からも、目白はTシャツの団体名のプロレス団体に所属するプロレスラー、もしくは練習生なのでしょう。




81話で目白がつぶやいた「あいつらが全滅すれば俺がトップだぁ!!」のセリフの通り、目白は屋上の支配者層の中では伊浦、サンゴにつぐポジションにいたと思われます。腕力だけなら目白は伊浦やサンゴを凌駕したに違いありませんが、知力と統率力でトップの位置にいた伊浦、抑制のきかない暴力によって恐怖支配を敷くサンゴには単なる腕力では勝てず、No.3 に留まっていたのでしょう。

なお、アイアムアヒーロー – Wikipedia では目白と田村をサンゴの「手駒」と表現していますが、この解釈は当たっていないと思われます。

7巻80話205ページ英雄一行が屋上に到達したとき、屋上の王国は伊浦とサンゴの権力が危うい均衡を保っていた状態でした。80話の伊浦のセリフからもリーダーをめぐる葛藤のあったことが伺われます。

もしこの時点で、田村はともかく目白がサンゴの側であったのなら、権力バランスは圧倒的にサンゴ側に傾き、均衡状態など成り立ってはいなかったでしょう。被支配者層からすれば、ある意味合理的判断をする伊浦より、平気で命を奪うサンゴの方が恐ろしい支配者であったことは想像に難くありません。

この状況で均衡がなりたつためには、あるいはブライの言葉を借りれば伊浦が「実質的支配者」となるためには、目白はよくて中立的立場、おそらくは伊浦に近い立場であったと思われます。

そして統合幕僚会議の直前にサンゴの工作により、目白・田村がサンゴ側についたと考えるのが自然です。実際その直後、伊浦は武器のボーガンを奪われ、サンゴをリーダーと仰ぐ立場に転落しました。

目白の姿に戻ります。

7巻77話152ページ比呂美の心象の中の目白の口は、縦についたチャックとなっています。比呂美の「夢」の中では、目白がこの口で英雄を飲みこんだのでした。これは直接的には、屋上の食うか食われるかの社会を感じ取った比呂美が、もっとも端的に弱肉強食の世界を体現している目白に対して、それをシンボル化したものでしょう。

口がチャックになっているもう一つの理由は、おそらくストーリー上の要請によるものだと思います。比呂美が目白から英雄を助けるためには、一度英雄が目白の口に食われてしまうことが必要でした(これについては後日「生きててよかったについての考察」で解説)。

次に腕です。異様に太いその手と腕は、これもわかりやすく目白の腕力を象徴したものでしょう。

よくわからないのがその足です。まるで棒のように細い足、いや、単なる棒です。大きな頭と逞しい上半身をささえるにはあまりに虚弱な棒です。

目白の身体的には、足に何らかの弱点がある様子は伺えません。比呂美によってへし折られてはしまいますが、それは結果であって原因ではありません。




身体的に対応する特徴が無いのであれば、他の登場人物同様、これも目白の心理的特徴をあらわしているということになります。つまり、粗野な言葉づかい、一見傍若無人な性格であるようでいて、実は目白の心の内面には虚弱な一面があり、比呂美がそれを感じ取っていた、ということを示唆しています。

そして実際、7巻最後(81話)、藪とのぎりぎりの言葉の駆け引きの中で、まさに目白の心に隠されていた弱さが露わになったのでした(この項、来週掲載予定の「説得についての考察」に続く)。

7巻81話233ページ></center><br />
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※記事中の画像は花沢健吾『アイアムアヒーロー』(小学館)単行本より

(2013/05/17 22:09 投稿)